このページは、リクルート活動の一環として
外部のインタビュアーに委託し、取材を行っています。

スタッフインタビュー

テクニカルアーティスト /
Houdini編

アーティストの「よりよい仕事」
のために

本日は「テクニカルアーティスト(以下、TA)」の中でも、
Houdiniを専門とするお二人に来ていただきました。自己紹介をお願いします。

廣瀬 前職は映像制作会社で、 キャラクターFXと呼ばれる髪の毛や服などのシミュレーションや、
エフェクトなどを担当していました。
他に、映像のカットの制作や他のアーティストが使うアセットの作成、
大量の映像を効率的に生成・管理するためのツール作成や
ルール設定なども行ってました。
今年で入社4年目になります。

森田 僕も前職は廣瀬さんと少し似てますね。
映像制作会社のTAとして、主にツール作成や設定調整などを担当していました。
個人的に好きな『ゼノサーガ』を手がけた会社で
ゲーム開発に関わってみたいという想いからモノリスソフトへ転職し、
今年で入社5年目になります。

TAのお仕事とはどんなものか教えていただけますか?

森田僕はTAのことを説明する時、
「画家が使う『筆』を作る職人」のような存在と言ってます。
筆づくりの技術や素材について詳しいだけでなく、
画家がどういった絵を描きたいのか理解していなければ、
その創作活動に適した筆は作れません。
それと同じで、アーティストの仕事やニーズを理解し、
ソフトやプログラムの知識を駆使して最適なツールを日々作成しています。

廣瀬そうですね。自分たちの仕事の役割の1つが、作業の効率化や自動化を進めて、
アーティストが制作しやすい環境を整備すること。
簡単に言うと「仕事を便利に、楽にする」のが仕事です。

なるほど。お二人はHoudiniに明るいと伺いましたが、
お仕事の中ではどのように使われているんでしょうか。

廣瀬 自分はエフェクトが主な担当で、
エフェクトデザイナーから「火花が出るエフェクトの素材を
Mayaで1つずつモデリングしていくのは大変」という相談を受けて、
それを簡単に実行できるHDAをHoudiniで作成して提供します。

それを使うと、アーティスト側では
パラメータを調整したりテクスチャーを替えたりするだけで
どんどんオブジェクトを作成・展開していけるようになり、
全てを一から作る必要がないので相当な時間短縮になります。

HDAを利用したエフェクト作成画面

森田 廣瀬さんはエフェクト以外にも、
いろいろなセクションの依頼を手がけてますよね。
ゼネラルTAみたいな存在。

廣瀬 そうですね、さまざまなセクションとやり取りしています。
イベントアニメーターからの依頼の例ですと、
カットシーンで使う群衆のシミュレーションを行ったりとか。
人々が行き交う様子を手作業で作り込もうとすると、
途方もない時間がかかってしまいます。
それをHoudini上でシミュレーションし
歩行のループのVATを作成することで、人同士がぶつかることなく、
それぞれが目的地へ自動的に歩いていくシーンが簡単に作れるようになるんです。

森田 僕は背景TAとして、主にマップモデラーの方たちとやりとりして
オブジェクト配置の効率化などのサポートを行ってます。
洞窟を作る時なら、岩や鍾乳石が大量に必要になりますよね。
そこにHoudiniやPythonを使ってツールを用意してあげると、
手早く簡単に、次々に作成できて、しかもサイズを勝手に調整してくれたり、
他のオブジェクトと重ならないよう自動で調整してくれたりと、
すごく便利になるんです。

ゲーム開発のさまざまな場面でHoudiniを活用しているのですね。

森田 モノリスが手がけるタイトルの内容によっては、
作らなければいけないアセットの数が膨大にあったり、
個々に求められるクオリティも非常に高くなっているので、
以前のように手作業で全部作るのは現実的ではなくなっています。
だからこそ、自動化や省力化に大きく貢献してくれるHoudiniの活用は不可欠ですし、
僕らがもっと研究して活用範囲を広げることが重要課題になっているんです。

廣瀬 そのため、R&Dとして研究開発も日々行っていて、
各セクションからの依頼が来ていない時や、
業務の合間に自分たちで時間を作ったりしながら、
Houdiniのもっと新しい使い方を試してみたり、
短期間ではなかなか成果が出ないような取り組みをコツコツと積み重ね、
成果を現場に共有して使ってもらえるようにしています。

例えば、建物を自動で組み上げる仕組みとか。
TECH BLOG』で紹介している破壊シミュレーションのような
エフェクトもそうですね。

TECH BLOG記事「破壊シミュレーション」より引用

森田 『TECH BLOG』というのは、
僕たちTAが中心になって技術研究やノウハウを紹介するブログで、
今年2月からモノリスソフトのホームページ内で定期的に記事を掲載しています。

廣瀬 「自分たちが日々の仕事の中で得た知見を、
多くの人と共有できたらいいな」という想いから始まったもので、
記事で扱うテーマも各自で考えています。

森田 HoudiniやMayaの事例はもちろん、
僕の趣味でもあるカメラの基礎についての回があったり。
初心者の方から上級者の方まで参考にしていただけるよう、
さまざまな内容を投稿しています。

じつは『TECH BLOG』の内容は、ホームページに掲載する前に
社内へ公開して技術の共有をしています。
記事を公開すると、別プロジェクトの人からも質問や感想が届くので、
反応が楽しみですね。
最近はTA以外のセクションから記事を執筆する人が出てきたりと、
いろいろな分野の知見が溜まってきています。

廣瀬 文章を書くのが得意というわけではないですが、
少しでも興味を持っていただけるように、
あまり堅苦しい雰囲気にならないように気を付けたり、
いろいろ工夫しながら執筆してますので、ぜひチェックしてみてください。

ロジカルに、スマートに、徹底的に

日々の業務では、どのようなことが求められているのでしょう?

森田 ロジカルな思考力が必要ですね。
Houdiniではノードでネットワークを組んでいく作業が基本となるのですが、
これって、ほぼ数式というか、プログラムに近いので。
アーティストから聞き取った要望を分析して、
条件式に落とし込む過程でロジカルな思考が求められます。

Houdiniの作業画面

廣瀬 HoudiniでHDA等を作成するのであれば、数学や物理など、
いわゆるコンピューターサイエンス系の知識は
あるに越したことはないですよね。

森田 じつは僕、モノリスに入ってからHoudiniのために
数学と物理を一から勉強し直したんです。
学び直したことで、社内からの要望を聞いた時に
「それならこの数式が使えるな」「あの法則を使えば実現できそう」と
ピンと来るようになったし、さらに知識の引き出しを広げる結果になったので、
これはやってよかったな、と思いました。

廣瀬 HoudiniではPythonやVEXという言語もよく使うので、
これもある程度理解して記述できる必要がありますね。
Mayaを使う場合には、最近は使う機会は少なくなってきましたけど、
MELも扱えるほうが仕事の幅は広がります。

お仕事をするうえでの「こだわり」や意識していることを教えてください。

廣瀬 要望どおりの対応が難しい場合でも、
何かしらの代替案を提案するようにしています。
来た依頼は、できるだけ解決したいですから。

森田 それって大事ですよね。
僕も「できません」と断ってしまうんじゃなくて、
「Houdiniではこう解決できるけど、
他のソフトを使ったらこういう解決もできます」と
状況次第でいくつか案を提示して、解決の道を探るようにしています。

廣瀬 あと、HoudiniでHDAの作成をする時は、使う人がストレスを感じないように、
できるだけネットワークの最適化や処理の高速化をするように意識してます。
組みながら「ここはもっと高速化できるぞ」というところを、
どんどん詰めていって。

森田 廣瀬さんは「最適化の鬼」なんです(笑)。
同じ処理でも、ノードの組み方によって
実行する時に多少時間がかかったりするんです。
でも、廣瀬さんが作ったツールは実行したらすぐ反応してくれる。
記述が合理的で無駄がない。だからめちゃ速いんです。

廣瀬 いやいや(笑)。
ノードベースのツールって、後から見返した時に
何をしているのかわからないくらい複雑になることもあるので。
最適化することで処理を追いやすくなったり、
自分の理解も深まってノードベースの得手不得手が見えてきたり、
利点が多いんです。

森田 僕も、過去に詰め込みすぎて苦労した経験があるのでよくわかります。
Houdiniを覚えながらあれもこれもといろいろ試してたら、
HDAがものすごく肥大化してしまって。
時間があったら今からでも作り直したいくらいです。
廣瀬さんに渡したら、
何も言わず直したデータをスッと置いといてくれそうですけど。

廣瀬 ふふふ(笑)。

とくにやりがいを感じるのはどんな時ですか?

廣瀬 自分の考えていたアルゴリズムが、
実際に思っていたとおりに動いた時ですかね。

森田 僕もです。
それから、情報収集をしてる時に
「この数式を入れたら、こういう結果になるんだ!」というのを知った時も、
結構楽しい瞬間ですね。

廣瀬 あとは、アーティストからの要望を実現するために
試行錯誤してる時も楽しいですよね。

森田 僕の場合、自分が作ったツールを目の前で使ってもらう機会が結構多くて。
「すごく便利になった!」というリアクションをもらえた時は、
やっぱり嬉しいですね。毎回そうなるとは限りませんが(笑)。
それも次の改善につながるのでありがたいです。

Houdiniの可能性を広げていくために

この会社に入ってよかったことは何ですか?

森田 きちんと時間を管理する意識が強くなりました。
限られた時間の中でどうやって作業を集中して進めていくか、
メリハリを付けながら仕事に臨むことを考えられるようになってきたので。
それは、仕事が終わった後の時間についても同じで。
この後は何をして遊ぼうか、今日はどういう勉強をしようか、
スケジューリングをきちんと考えて、
オン・オフ共に濃密な時間を過ごせるようになったと思います。

廣瀬 そうやって仕事の時間をしっかり管理することで、
新しいチャレンジをする時間が確保できるのは、すごくいいところですよね。
仕事が終わってから、気になっていた論文を読んだりする時間もありますし。
あと、仕事の中でも研究開発の分野では比較的自分の好きなこと、
興味のあることをやらせてもらえています。

もちろん「ゲーム開発に貢献するために」というのが大前提ですが。

スキルアップのために日頃から行っていることはありますか?

森田 数学や物理の情報収集以外だと、
Houdiniの最新事例やリリース情報は当然チェックしています。
イベントの講演やセミナーなどのHoudini情報も一通り眺めて、
大体どうやって作っているのか考えたりしていますね。

廣瀬 自分は、時間がある時に気になったアルゴリズムを
Houdiniで実装してみたりしてます。
仕事のためでもありますが、半分趣味でもあります(笑)。

森田 廣瀬さんはもう、TAが天職ですよね(笑)。

廣瀬 はは(笑)。そうですね。
ゲームや映像作品を見ると、ついTA目線で考えてしまったり
「ここの背景はもっと自動化できそうだよね」みたいな話は、
よく森田さんともしますよね。

森田 完全に職業病です(笑)。
でも、そういう風に自動化や効率化を考える習慣は
とても大事だと思っています。

モノリスソフトで働いて成長した部分と、これからの目標を教えてください。

森田 僕はモノリスに入社してからHoudiniを本格的に触り始めました。
それから5年ほどでそれなりに使いこなせるようになったのは、
成長した部分かなと思います。
それに伴ってコンピューターサイエンスの知識が身に付いたのも、
大きく変化した部分ですね。

Houdiniはまだまだ奥が深いソフトなので、
今後も突き詰めていきたいと思っています。
より幅広く仕事ができるようになりたいですね。

廣瀬 着実に知識の量を増やしたり、提案の幅を広げたりできていて、
そのあたりの力は付いてきたと感じています。

自分の場合、最近ツール作成の担当が多くなっていたので、
今後は絵作りに関わる業務も増やしていきたいですね。
アーティストと近い立ち位置で仕事をすることで、
これまで以上によい提案が見えてくると思うので。

ちなみに、TAに応募する際のポートフォリオは、どのような点に気を付けて作成するとよいのでしょうか。

廣瀬 作ったツールやHDA等がどういった課題を解決するためのものなのか、
どれくらい工数が削減できたのかなど、
その人の解決力や対応力が具体的にわかる資料になっていると良いと思います。

森田 必ずしも高度なものである必要はないかもしれないですが、
Houdiniのチュートリアルをなぞっただけだと、
ちょっとレベルを判断しづらいかもしれません。
「どのチュートリアルを使っていて、どこまでが自分の工夫なのか」みたいに、
手がけた範囲が明確になっていると伝わりやすいと思います。

最後に、入社を検討されている方へ向けてメッセージをお願いします。

廣瀬 モノリスソフトの「Houdini使い」はまだまだ少ないので、
もっと増えて欲しいと思っています。
ゲーム開発の現場で知見を語り合いながら、
一緒にHoudiniの可能性を広げていきましょう。

森田 Houdini全体を完璧に使いこなせる必要はありません。
これからHoudiniのスキルを伸ばしていきたいという人も大歓迎です。
エフェクト、アニメーション、背景と、活躍できる場はいろいろありますので
遠慮せずに、ぜひ応募してみてください。

本日はどうもありがとうございました。

※感染症対策として
ビデオ会議形式にてインタビューを実施しました。

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