新卒アニメーターが1年で学んだこと

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はじめに

こんにちは。モノリスソフト デザイナーの髙橋です。
新卒デザイナーとして入社し、現在は主にイベントシーンの制作を担当しています。

入社前は4年間美術大学で日本画を学び、卒業後はCGを学ぶ為に2年制の専門学校へと進学しました。
CGアニメーションは専門学校で基礎を一通り習いましたが、ツールの使い方・アニメの作り方は独学です。

モノリスソフト入社後の1年間で、アニメーションを作るうえで学んだこと・変わったことをご紹介できればと思います。
教えていただいたことの中でも特に作業に役立った知識・考え方をピックアップしますので、新人アニメーターの方の参考になれば幸いです。

コンストレインを使用した杖アニメーション

学生アニメーターの中で、コンストレインを重点的に学んだ方は少ないのではないでしょうか。
学生時代、授業でも取り扱われることはありましたが精々剣を手に持つ、ボールを掴んで投げる程度だったと記憶しています。

入社後の新人研修課題で「人物の歩きアニメーション」が出た際に、「杖をついた老人の歩きアニメーション」を作ることがありました。
杖を持つ、地面に着く、杖を軸に前へ進む...一連の動きを表現するのにコンストレインを使用した為、一例としてご紹介します。

老人の歩きアニメーション

▶手と杖の階層構造の作成

tech_12_03.png tech_12_04.png

コンストレインを使用し、杖のジョイントと人物の右手首を複数のロケーターで制御する仕組みを作りました。
各ロケーターの使用方法を以下で説明します。

Rod_Top
杖の持ち手部分のロケーターです。これに杖モデルを親子付けしています。
手のIK、手首の回転にそれぞれコンストレインしており、杖が地面から離れている間はこのロケーターで制御しています。
杖を前へ運ぶ際の揺れ、地面に着いた瞬間のブレなど細かい所作を表現するための部分です。

tech_12_05.pngのサムネイル画像

Rod_rotate
手首の回転を別途で制御するロケーターです。手首に回転コンストレインしています。
Rod_Topで動かした際に起こる手のズレ、力が入った時の手の握りこみなどの調整に使いました。

tech_12_06.pngのサムネイル画像

Rod_root
杖と地面の接地面についたロケーターです。杖周りはまるごとRod_rootの子供にしています。
杖が地面に接している間はしっかりと地面に固定しておきたい為、このロケーターで制御しています。

tech_12_07.pngのサムネイル画像

Rod_loc
今回は実際にマネキンを前へ歩かせていた為、ワールド移動用のロケーターです。
Rod_rootはこのロケーターに方向コンストレインしていました。
その場でループする場合は要りません。

これらをまとめて空のグループ(Root_null)の中に仕舞って完成です。

これまでコンストレイン周りはリグに直接繋げることが多く、また構造が複雑で避けていました。
ロケーターを挟み、制御できるポイントを増やす方法は一見難しく思いましたが理解してしまえば活用方法が広く、全体的な作業の効率化が図れたと思います。

もっと慣れた方のやり方を聞いたり、実際に試して自分のスタイルにあった方法を探すことが一番ですが、コンストレイン周りが難しく忌避している方の取っ掛かりとなれば幸いです。

アニメーション制作での考え方

次にアニメーションを作る際の考え方について、変化のあった部分を紹介します。
新卒アニメーターは、就職活動用のアニメーションを人に見せた際に「タメツメを意識した方がいい」というのをよく耳にしていたのではと思います。

何度も言われていたこの言葉ですが、結局タメツメってなんなんだろう?具体的にどうしたらできるんだろう?と就活時代は考えていました。
新人研修課題のバトルアニメーションを作っていた際に、この部分が少し理解できた為お話できればと思います。

こちらが「3連のバトルアニメを作ってください」と言われた際、はじめに提出したものです。
「(蹴り)足を振り上げるフレームは少なく、上げてからを多く取っているからこれがタメツメだろう」と考えていました。

この後アドバイスをもらい、調整した最終データが以下となります。

まだ未熟な部分もあるかとは思いますが、第1稿と比べると大分アクションらしくなったのではないでしょうか。

この課題を作成しながら自分なりに学生時~今までの考え方を整理してわかったことが、

  • 一部の形を追うことに必死になって
    タイミング(リズム)の客観視ができていない。
  • 必要なフレームの取捨選択がわからない。
  • 動きを2,3フレームに縮めることに抵抗がある。

という3点です。

特に下2つが顕著で、「それっぽい動きになってるんじゃないだろうか?」「フレームを削ったら動きが変になってしまうんじゃないだろうか?」という考えが強く、
ポーズトゥーポーズでアニメーションを作り、Mayaによって間が補完されたアニメーションを見て満足することが多かったです。

作ったアニメーションのポーズにだけ意識が向いてしまい、自分が気にしている細かい部分にしか目が向かなかった結果、全体のタイミングやバランスを見ることが難しくなっていました。
ブロッキング作業をしっかりしていれば回避できる問題なのですが、インプットが未熟な場合「それっぽい気がする?」で進めてしまいがちです。

よいタイミングを見つけるということが一人だと難しく、一人で考えて先走るよりも人にチェックしてもらう・アドバイスをもらうこということが初めのうちは大事なのではないかと思いました。

まとめ

1年間で学生時代から変わった視点・覚えた中でも実作業に役立っている知識をご紹介しました。
こういった新卒の視点を共有することで新人アニメーターの教育を担当される方、アニメーターを目指す方にとって気付きとなる部分があれば幸いです。

まだまだ未熟な部分が多く、日々周りの方々に学ばせていただいています。
一人前のアニメーターとして仕事を任せていただけることを第一目標に精進しつつ、自分だけの強み・得意分野を見つけていきたいです。

執筆者:髙橋

デザイナーとしてモノリスソフトへ新卒入社。以来、イベントアニメーターとしてカットシーン制作を担当。好きな食べものはチョコレート。

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