初めて触れるMarvelous Designer

INDEX

はじめに

こんにちは。モノリスソフト 3DCGデザイナーの木寺です。
普段は業務でキャラクターモデルを作成しています。

今回はMarvelous Designerに興味がある方向けの簡単な紹介記事となっております。

『Marvelous Designerって何?』 『ゲーム開発で使えるの?』
という疑問を解消するお手伝いをさせて頂ければと思います。

"Marvelous Designer"とは

リアルタイムで直感的なクロスシミュレーション&型紙から衣装作成ができる、高性能な3DCGソフトウェアです。
既にMarvelous Designerを利用して開発されているゲームタイトルも複数あり、非常に実用的なツールとなっております。

クロスシミュレーション

直感的なクロスシミュレーション

Marvelous Designerでは、シミュレーション中に思いのままシルエットを変えることが出来ます。

型紙から衣装を作成

2Dパターンから衣装を作成/切り抜くなどして、アバターに着せることが出来ます。

自作の型紙を読み込めば、自由にアレンジし放題です。

実際に使ってみる(体験版)

Marvelous Designerには日本語版の公式Youtube&無料トライアルがあります。

動画をいくつか見てみると、ツールの具体的な使い方を学ぶことが出来ます。

『ダウンロードしてみたけど何から始めたら良いの?』

そんな方に向けて3STEPの簡単な導入を用意しました!
バージョン違いなどありますが、概ね仕様は一緒ですのでMarvelous Designer12のUIで各ステップをご紹介します。

STEP.1 - 他のソフトウェアと同じ操作方法に変更

まず初めに、Marvelous Designerを開いたら環境設定からビューコントロールの変更を行います。※インストール時に設定していれば不要
(設定/環境>環境>ビューコントロール)

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右上にあるユーザー設定▼タブを展開したら、任意の操作方法に変更します。
私はMayaとのやり取りが多いので、Mayaと同じコントロール設定にしています。

STEP.2 - Libraryからアバターと衣装を出す

メインメニューからLibraryタブを開きます。(ウィンドウ > Library)
Libraryの横にある[▼]を押すと、別のウィンドウに切り替えることも出来ます。
Libraryには、最初からいくつかの衣装やアバターが収納されていますので、今回はこちらを使って機能の確認をしていきましょう。

tech_37_05.jpg

Libraryの一番上に表示されているGarmentにいくつか衣装があると思いますので、
アイコンをダブルクリック/3D Windowにドラッグ/右クリック>作業画面に追加 のいずれかでモデルを読み込むことが出来ます。

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※この時、例えば衣装を2つ以上読み込む場合、追加ではなく開くにチェックを入れた状態で読み込むと、現在開いている衣装データが消えてしまいますのでご注意ください。


というわけでAvatarフォルダから【Male_V2】、Garmentフォルダから【Tshirt】を読み込んでみました。
このままだとめり込んでしまいますので、2Dパターン>フィッティングから自動フィッティングを行い、スペースキーでシミュレーションを実行します。
(3DViewからパターンを選択、ドラッグで移動する事も出来ます。)

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シミュレーションには3種類の設定があります。

※MD12時点。最新情報は公式マニュアルをご確認下さい。

tech_37_08.jpg

【高速(GPU)】・・・とても早くシミュレーションをしてくれますが、貫通しやすい為注意が必要です。
【通常(基本)】・・・基本的なシミュレーション速度です。高速と比べ皺の出方に差異が出ます。
【フィッティング(高精度物性計算)】・・・計算に時間が掛かりますが、ポージングの推移で貫通を抑えてくれます。

スペースキーで小まめに一時停止していると、元に戻しやすいです。

次に、生地の変更とスタイリングを行います。
画面右上にある『Fabric』のレイヤーを選択すると、PropetyEditorに詳細が表示されます。
物性の中にあるプリセット値から三角のタブ▼を押すと、生地を変更する事が出来ます。

同じ服でも生地が違うだけで、しわのつき方、動き方に大きな差が出ていますね。

半袖を長袖にしたい時などは、スタイルライン編集から調整しましょう。(2Dパターン>フィッティング>自動フィッティング)
(勿論2DPatternから直接型紙を変形させても良いのですが、その場合はきちんと縫い合わせが正しくなるよう修正してください。)

生地を変更するタイミングによっても皺の表情が変わりますので、最終的な利用目的に合わせて調整してみてください。

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他にも、パターンの粒子間隔を変更することによって、ポリゴン数を増減することが出来ます。
とても重くなりやすいので、基本は10~20mmでシミュレーションしていきましょう。

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下図のようにパターン間で粒子間隔に差があっても、シミュレーションしてみると縫合された箇所は自動で結合してくれます。

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STEP.3 - 好きなポーズにする

アニメーションやポーズに合わせてシミュレーションしてみましょう。

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このポーズは自分で好きにつけて保存/実行することが出来ます。
シミュレーションを停止した状態で、ディスプレイ>アバター>X線関節表示(Shift+X)で骨を表示させたら、動かしたい骨を回転/移動させます。
ファイル>名前を付けて保存>ポーズで出しやすいフォルダに保存したら、他のポーズと組み替えて動きを確認してみましょう。

ポージングの途中で『この部分のしわを残したいな』と思ったら、パターンを右クリック>形状保持をONにして初期ポーズに戻すと、関節回りに良い感じの皺が残ってくれます。※形状保持は必要な時以外OFF
これをベースにすれば、スカルプトで生じやすい手書き皺のムラが無くなります。

これ以上シミュレーションさせたくない場合は、パターンを選んで右クリック>固定、もしくは非アクティブにしましょう。
固定した衣装の上から更に衣装を置くことが出来ます。
非アクティブにした場合貫通してシミュレーションされますので、適宜使い分けて下さい。

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尚、ポージングには追従しませんので全ての衣装をシミュレーションさせたい場合はレイヤー設定などを行ってください。
※デフォルト:0 (生地を上に重ねるほど数値を上げる)

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※尚、重なり方と数値が逆転するとめり込みが発生してしまう為、必要な時以外は0にしておいてください。

他にも公式ストアでは沢山の衣装がダウンロードが可能です。
実際にMarvelous Designerで作られているデータを見ると、その構造について理解が深まるかもしれません。

既存のモデルをすぐに利用できる

最後に、既存のモデルを利用してシミュレーションする方法について紹介します。
ゲームキャラが着るような特殊な衣装は、Marvelous Designerで形を起こすよりもモデリングしたものを読み込んでくるほうが良いです。

実作業でもシミュレーションが必要になるタイミングでは、セットアップ済みのモデルが手元にある場合が多いと思います。
以下の手順で素体をアバター、装備を衣装として読み込んでみましょう。

この時、Libraryの階層に倣って作業用フォルダを作っておくとスムーズに作業が行えます。

自作の素体をアバターとしてインポートする

  1. アバターとして、Mayaなどからスキニング済の素体モデルを骨と一緒にfbxで書き出します。
    後からスムースアバターでサブディビジョンレベルを上げることが出来ますのでローポリで問題ありません。

    tech_37_17.png

  2. Marvelous Designerのファイル>インポート>fbxから➀のデータを読み込みます。
  3. フィッティングスーツ配置点の自動作成に✅、スケールに問題が無いか確認してインポート。
    ※配置点は作成が失敗してもアバター>アバター編集から配置点/配置仮想円柱の修正が可能です。
    ※フィッティングスーツの作成に失敗しても3D衣装>フィッティングスーツ作成から設定が可能です。
  4. アバターを選択して右側メニューのPropetyEditorが正しいかご確認ください。
    表面のスキンオフセット(mm)はアバターと衣装の接触距離です。

設定が終わったらファイル>名前を付けて保存>アバターと保存しておきましょう。

自作の服を衣装としてインポートする

  1. 衣装として、MayaなどからUV展開された布モデルをobjで書き出します。
    衣装に関してはある程度ハイポリにして持っていくのがおすすめです。(縫合精度も上がります)
  2. Marvelous Designerのファイル>インポート(追加)>OBJを衣装として読込みから➀のデータを読み込みます。
  3. UVマップの2Dパターントレースを✅、スケールに問題が無いか確認してインポート。
  4. 衣装として読み込んだ場合、UVがそのままパターンとして画面に出てきます。
    ※ある程度現実に即した型紙(UV)にしておかないと、シミュレーションした時に形が崩れてしまいますのでご注意ください。(圧力+10で膨張)

    tech_37_18.jpg

  5. ある程度自動で縫合してくれますが、足りてない部分は縫い合わせから修正しましょう。
    (縫い合わせ編集(B)、線縫い合わせ(N)、自由縫い合わせ(M)・・・)

こちらもシミュレーション前のテンプレートとしてファイル>名前を付けて保存>衣装~から保存しておきましょう。

モデルを読み込む時の注意事項まとめ

★アバター(スキン、ヘアー、クリノリン)

アバターは後から好きに追加/削除が出来ます。
芯材が必要なシルエットにしたい時は、個別に読み込んで保存しておきましょう。
素体と同じ骨とウェイトが入っていれば同時にアニメーションします。

tech_37_19.jpg

・スケールを合わせる

極端な話ですが、3mmの衣装をシミュレーションしようとしても上手くいきません。
できるだけ現実のスケールに合わせたサイズで作成してください。

・衣装は適切なUVで

基本的に2DPattern(UV)を基準に3Dモデルがシミュレーションされます。
意図した構造でなければ、UVを切り分け3Dのシルエットに沿ってUVを最適化してください。

・装飾品など

形をそのままでシミュレーションしたい場合は副資材(ボタン)として読み込んで下さい。素材>ボタン>ボタンで追加、Buttonウィンドウを開いて図形+から追加)
リボンをシミュレーションで作った後、オブジェクトと書き出し素材化する、なども出来ます。

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まとめ

いかがだったでしょうか?
実際に試してみた方は、あれやこれやと作ってみたい衣装が沢山頭に浮かぶのではないでしょうか。

まだまだ便利な機能が盛りだくさんとありますが、長くなりますので割愛させて頂きます。
本記事を見て、業種問わず『Marvelous Designerを導入してみたい!』と思っていただければ幸いです。

モノリスソフトではよりよいモデルの作成に向けて、様々なツールの利用を進めています。
将来的にも、こうした開発に興味のある方とご一緒に仕事できる日が来ることを願っております。

執筆者:木寺

スマホゲーム開発会社を経てモノリスソフトへ入社。 以来、キャラクターモデラーとして主にNPC関連の業務を担当。 好きなオカメインコのカラーはホワイトフェイス。

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