執筆者:本部
アニメーターとしてモノリスソフトへ入社後、現在はテクニカルアーティストを務める。 好きな動物はねこ。
TECH BLOG
こんにちは。モノリスソフト テクニカルアーティストの本部です。
アニメーションについて考えることが多い今日この頃。アニメーションについて話すうえで「重心」という言葉をよく聞きます。
重心をもっと低く、重心が取れていない etc。フィードバックで使われることも多く、あまり聞きたくない言葉・・・かも?
そんなネガティブな印象を持ちがちな「重心」に、この機会に改めて向き合ってみることにしました。
「重心ってよく聞くけど実は良く分かっていない」という方の一助になれば幸いです。
重心ってそもそもどう定義されているのでしょうか?
インターネットで調べると以下のような定義が見つかります。
合力?作用点?なんだか難しいので、ここでは分かりやすく以下のように考えます。
重心とは
「重心=物体をその一点のみで支えることができる点である」と、重心について少し理解が出来ました。
どうやら物体に対して一つだけあるようです。
次は単純な形状のモノで、重心がどの辺にあるのかをイメージしてみます。
20cmの長さの定規の場合、重心の位置は20cmの真ん中部分にあります。
レコードなどの円盤状のものの場合、重心の位置は中心位置になります。
みんな大好きモーニングスターは、一部分だけ膨らんだ形状で、かつその部分の材質が金属なので重量に偏りがでます。
なのでこの辺になるのではと思います。
これまで見てきたような単純な形状で質量が比較的均一なモノは、重心もイメージがしやすいです。
これまでの例では、凸凹の少ない単純な形状で重心をイメージしてきました。
重心に対してのよくある勘違いで、「重心は物体の中にある」というものがあります。
例えば、玩具の「やじろべえ」。
このやじろべえの重心は、やじろべえ自体の中にはなく、下の空間にあります。
だから倒れにくい。
ここまでをまとめると重心とは以下のようなものになりそうです。
重心とは
ある程度重心について分かってきたところで、よく耳にする「重心がズレている」とはどういうことなのかを考えてみました。
物体が静止している(立っている)には、重心が「支持基底面」の上に納まっている必要があります。
「支持基底面」とは、地面に設置している箇所を結んだ面のこと。検索すると医学や介護の分野が多くヒットするため、その方面での用語のようです。
人間の場合、両足のつま先と踵を結んだ面が「支持基底面」になることが多く、杖や手をついた場合には、その接地部分も含めた範囲になります。
「重心」が「支持基底面」からはみ出していると「転倒」します。
「重心」が「支持基底面」からはみ出している=「重心がズレている」といえるでしょう。
また人間などの場合、たとえ支持基底面から重心がはみ出していなくても、姿勢的に辛そう(≒重心が偏っている)に見えると重心がズレているように感じると思います。
重心と支持基底面の関係から、以下のことが分かります。
重心が高い=少しの傾きで、支持基底面からはみ出しやすくなる
支持基底面が狭い=少しの重心の動きで、支持基底面からはみ出しやすくなる
逆説的に、重心が低く、支持基底面が広い=「安定性が高い」といえそうです。
柔道などで「重心を低く構える」という言葉を耳にしますが、重心を低く構えることで安定性を増すのが狙いなのだと思います。
前述のやじろべえは、支持基底面(やじろべえの足先)よりも重心を下に持つことで、少しくらい揺れても倒れないほどの高い安定性を出しています。
さて、重心の意味や考え方について、ある程度分かってきたような気がします。
結構基本的なことかもしれませんが、キャラクターのポーズやアニメーションを作るうえで少なからず役立ちそうです。
いかがでしたでしょうか。
今回、アニメーション制作をするうえでよく聞く「重心」について、考えてみました。私自身、今まで重心について知っていたつもりでしたが、今回のテックブログを書く中で新たな発見や知識を得ることが出来ました。
私同様に、今回の記事が読んで頂いた方の新しい発見の一助に、少しでもなれば幸いです。
執筆者:本部
アニメーターとしてモノリスソフトへ入社後、現在はテクニカルアーティストを務める。 好きな動物はねこ。