執筆者:橋本
映像業界を経てモノリスソフトへ入社。 以来、キャラクターモデラーとして主にキャラクターから武器、プロップ関連の業務を担当。好きなものは日本刀(歴史)。
TECH BLOG
こんにちは。モノリスソフト キャラクターモデラーの橋本です。
今回はSubstance 3D Painterの「どれぐらいの心構えで使えばよいのか」と「すこしかゆいところに手が届かない」といったところに触れて、皆さんに導入時の心得と利便性を感じ取っていただければと思います。
Substance 3D Painterを一言でお伝えすると「物理ベースのテクスチャが作りやすいツール」です。
昨今で取り扱われているPBR(フィジカルベースドレンダリング)に特化し、現実(リアルテイスト)の表現がしやすいツールとなっています。
物理ベースと聞くと「うぅ 気を付けることがたくさん」と思う方もいると思いますが、初手で気を付ける点は2点ほどなので意外と気軽に進められます。
もちろんプロジェクトで活用し、大勢の人数で活用する場合は、ある程度の仕様決めは大事ですが、数値のルールも決めやすいので、汎用性という点でも有益です。
またプリセットも充実していて、適応して少し調整するだけでかなりいい感じなものになってくれます。
要点を先に申し上げますと、以下のような意識で私は活用しております。
いきなりかっちり使おうとするとパラメーターの多さに圧倒されてしまうと思います。
なので、まずはデフォルトの数値だけでラフに仕上げましょう。そこから徐々にパラメーターを一つ一つ操作して理解し、自分の求める表現にブラッシュアップしていくイメージですね。
Substance 3D Painterには「PBR Validate (Metallic Roughness)」というフィルターが存在し、これを用いてPBRとして正常かどうかを判断しています。
見ている要素
画像のように緑の領域は問題ないですが、赤い領域はPBRの規定でエラー扱いとなります。
NOTE:
ここで注意が必要です。
PBRの定義として、Metalは金属を数値1・非金属を数値0に定義しています。
しかし、Substance 3D PainterのPBR ValidateはMetalを数値1に設定すると赤い領域判定となります。
ツールとしてはエラー判定になると思いますが、PBRの定義として普及しているのは0と1だけという定義なので、まずはそれに合わせるとよいでしょう。
こちらの判定基準はフィルターのプロパティにある 30sRGB にすることで、RGB値0~255の範囲での限界ラインを設定できます。
再度お伝えしますが、メタリックの数値は0か1だけにしましょう。
現状のPBRの定義では、金属は1・非金属は0と定義されているのでそれに従います。
もちろん0と1だけでは表現しきれない質感もあります。
それでも、まずは一度PBR定義に沿って0と1で作成しましょう。
それを習慣として身に着けておけば、複数人でプロジェクトを進める際に質感品質のブレを軽減できます。
PBRによる質感品質を平均化できたら、改めてMetal数値0と1以外にして表現を高めましょう(それを高めるためにどのような調整を施すのかもルール化は必要ですが...)
最初に申し上げた注意する2点はこの「Albedo」「Metal」部分になります。まずはここに注意しましょう。
ここからさらに、リニア値の場合であったりプロジェクトに合わせた規定などございますが、そちらはまた次の機会にお話し出来ればと思います。
Substance 3D Painterにおいて最も大事なのはベイクだと思われます。
これをどれだけ綺麗に作れるかで、後作業のテクスチャが綺麗に作れるかが決まるといっても過言ではありません。
まず気を付けているのはローモデルとハイモデルのネーミングルールです。
ここはズレの無い状態にし、ローモデルの末尾に_low・ハイモデルの末尾に_highを記載するようにしています。
このようにしておけば、必ずネーミングが同じオブジェクト同士だけベイクしてくれるので、他のオブジェクトからの影響を除外してくれるのです。
Substance Painterの設定側であえてオブジェクト同士を影響させることも可能なので、ネーミング整理をしておくとお得です。
上記の状態でSubstance 3D Painterにデータを移行し、ベイク作業に入ります。
近年のベイクのウィンドウはケージの影響範囲を可視化してくれるので、領域が足りていないなどは赤色の部分ですぐに見分けられると思います。
今回は極端なことをしますが、複雑なモデルになるほど下記のケースに遭遇しやすいでしょう。
データの整理を怠った状態でベイク処理に入ると、以下のようなベイクエラーが発生します。
これを対処していないとテクスチャを作成していく際に、ジェネレーターなどの機能がこのエラーを検知して不必要な表現になってしまいます。
Mayaなどのモデリングツールの時点でデータの管理は気を付けましょう。
Substance 3D Painterにはプリセットが充実していて、さらにはAdobe Substance 3D Assetsに膨大な追加アセットもございます。
それらを活用して、素早く土台を作成し、こだわりたいところに時間を活用していきましょう!
下地の金属を置いて
塗装のペイントレイヤーを重ね
マスクを適応して、少し角がはげたようにしたい
ほぼパラメーターをいじらずに、ドラッグ&ドロップだけでここまでやってくれます。
もちろんこれで完成ではありません!ここからどのように品質を上げていくかが勝負です。
ここから、雨に打たれていた・塗装のめくり・可動するなら可動域の擦れなどのこだわりを入れて品質を高めることに時間を活用することが出来ます。
クオリティに大きく関わってくる箇所へ注力するため、あまりクリティカルに影響しない箇所はざっくり進めておくイメージですね。
レイヤーを追加することで、直接ペイントする事も可能です。
しかし、これは非常に嫌がられます。
なぜかというと、修正や変更が起きた際に初めからやり直すしか方法が取れなくなってしまうからです。
もちろんエクスポートしてマスクとして使用することもできますが、結局手間がかかってしまいます。
なので、直接ペイントして何かしたい場合は必ずマスクを使うように日々心掛けましょう。
このように安全策を取っていれば、後から「質感はそのままに線の太さを変えて」や「線の太さはそのままでいいから質感変えて」などの要望にも応えられます。
レベル補正を入れて補足したり
中身の質感を変えたり
このように柔軟性のあるデータを作ることで、作業の後戻りを減らせます。
(実は最初のマスクペイントも嫌がられたりします。そんな時はPhotoshopでパスの情報を残して後調整できるようにしておきましょう。)
NOTE:
縁取りのラインデザインなどハンドペイントで描くと非常に疲れますよね。
UVも円に開かれていたりしたら、完全な円を描かない限り絶対に歪んでしまいます。
Photoshopでも綺麗にUVを開いていないと、結局ラインを引き直すなど...
これはめんどくさい...
こんなときはUV Border Distanceを二重にかけて縁取りラインを作ってみましょう。
一つ目のエフェクトは見せたいライン用
二つ目のエフェクトは縁を乗算で重ね、一列内側に来るように見せるため
このように組み合わせることで基本的に衣装の縁などはUVの境界になりやすいので、8割程欲しいラインを作れるかと思います。
NOTE:
UV Border DistanceはUVの形状に依存するので、UVの形状が複雑だとうまくいかないケースもありますのでご注意を。
Substance 3D Painterにも最近、パスツールが導入されてさらに便利になりました。
より直感的に立体物に曲線を描くことが出来ます。
ペンのパラメーターによる後調整も可能となっています。
レイヤーをアクティブにした状態で、UIの上部にある間隔パラメーターを調整すると間を後調整できます。
さらにアセット欄のブラシツールで他のものを選択すると、それに切り替わりもしてくれます。
Substance 3D Painterではマスクに対して、ジェネレーターやフィルターのエフェクトを追加してレイヤーを構築していくことが多いです。
しかし、通常の場合だとUVの切れ目が考慮されない状態で出ることがあります。
下記の画像はジェネレーターをマスクに適応しただけの状態です。UVの切れ目が顕著に見えるかと思います。
そんな時は、ジェネレーターのプロパティー内にある「Use Triplanar」を有効にしましょう。
UVの切れ目が解消されましたね。
ただし、注意が必要です。マスクにエフェクトを追加していくとこの効果も薄れていきます。
例えば、ブラーエフェクトを追加して影響を薄く適応すれば、あまり目立ちませんが...
影響を強くすると切れ目が現れてしまいます。
エフェクトの追加はいくらでも可能ですが、やりすぎると対処できない部分も発生し、データ自体も重くなります。適量に抑えるように心がけましょう。(筆者は5個以上増えてくると管理が大変に感じます)
現状でできる最終手段として、ペイントエフェクトを追加し、つなぎ目を調整する方法があります。
今回は初級者向けの心得とトピックを挙げてみましたがいかがでしょうか?
もちろん、これ以外にも様々なケースがあり、利便性もたくさんありますので徐々にご紹介できればと思います。
今後Substance 3D Painterを活用したいという方の手助けになれましたら幸いです。
PBR(物理ベースレンダリング)とは- Adobe Substance 3D
https://www.adobe.com/jp/products/substance3d/discover/pbr.html
Substance 3D Assets
https://substance3d.adobe.com/assets
執筆者:橋本
映像業界を経てモノリスソフトへ入社。 以来、キャラクターモデラーとして主にキャラクターから武器、プロップ関連の業務を担当。好きなものは日本刀(歴史)。