このページは、リクルート活動の一環として
外部のインタビュアーに委託し、取材を行っています。

2022.02.01 京都スタジオ スタッフインタビュー

『あつまれ どうぶつの森』地形デザイン担当

試行錯誤の末にたどり着く3Dモデルの完成形

本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

矢頭よろしくお願いします。

まずは、自己紹介をお願いします

矢頭※『あつまれ どうぶつの森』の「地形班」班長として、主に地形3Dモデルの作成と監修を行いました。フィールド地形だけでなく、家や施設、橋や坂、柵など、地形関連オブジェクトも作成しています。
※過去、『マップモデラー編』のインタビューにも登場。

任天堂さんと、どのように製品を作り上げていくのでしょうか。

矢頭基本的には、量産が可能になった段階から合流することが多いです。任天堂さん側で遊びや仕様が固まり、作るオブジェクトのサンプルがいくつかでき上がったところから僕らの作業がスタートするのですが、具体的な作業手順まで明確になっている場合もあれば、方向性だけ示されて「細かい部分は自由にやってみてください」とお任せいただけることもあります。

また、3Dモデル作成の前段階として、スケッチを先に描くこともあります。その時には、コンセプトに沿いつつ、こちらからディテールや作り方の提案をします。

これまで制作したものを教えてください。

矢頭はい。いくつかあるのですが、まずは地形班のスタッフが作ったものをご紹介しますね。

代表的なのは、プレイヤーや動物たちが住む家です。
この時は最初にスケッチを描き起こしているんですが、屋根、壁、ドアとパーツが分かれているので、それぞれ別々に描いてディテールを詰めています。

例えば「ようがわらのやね」は、瓦一つひとつに目立ち過ぎない程度に表情の差を付けています。こんな風に、同じ素材の中でも少しずつ変化を付けて、豊かな表情に見えるよう工夫しています。

スケッチは、任天堂さんとしっかりすり合わせするためにも、細かい部分まで描き込むことが多いですね。でも、なかなかそれだけでは完結できません。モデル作成に進んでからも、この瓦の接続部分など、ディテールの表現に関しては何度も細かくすり合わせして詰めていくことが多いです。

どういったご苦労があったのでしょう?

矢頭『あつまれ どうぶつの森』は、ハードがNintendo Switchに変わってより細かな表現ができるようになったこともあり、前作とはデザインが変わっているものが多いんです。実際、先ほど紹介した家も前作からは大きく変わっていて、あまり過去のデータは参考にしないで作成しています。そういう中で、今作で求められているデザインの方向性やニュアンスに合わせて、どういったディテールに落とし込んでいくのか探りながら、いいものを仕上げるところに難しさがありましたね。

『あつまれ どうぶつの森』全体のグラフィックのテーマとして「デザインの記号化」というのがありました。そのもの自体の魅力がわかる絵を担保しつつ、簡略化できるところを省いていく方針です。では、どこをどう省いたらいいのか。例えば、ドアには本来、開閉するための蝶番が付いていますが、「ゲーム上では省いてもビジュアル的には成立するよね」など、ドア一つとっても、そういった細部の試行錯誤を何度も繰り返してでき上がっています。

ゲームの中で「地形」が果たしている役割とは

任天堂さんとお仕事をしてみて、どのような印象を持たれましたか?

矢頭以前から、任天堂さんは「ゲームの遊びの部分を作る」ことに非常にこだわっている会社だなと思っていました。そのイメージは、一緒にお仕事をするようになってからもずっと変わってないですね。

その実体験をご紹介すると、僕が京都スタジオに配属されて最初に参加したのが『スプラトゥーン』なんですが、協業が始まった時に「ゲームの概要を知ってもらうため」ということで、任天堂さんのオフィスに京都スタジオのスタッフでお邪魔したことがありました。グラフィックが仮の状態の試作版をプレイさせていただいたのですが、まだ開発としては初期段階のはずなのに、その時点でゲームの核となる体験がほぼでき上がっていたんです。今まで僕自身が、アクションゲームの開発に関わった経験がなかったので、この新しいタイトルに関われるという感動と、新鮮でワクワクした気持ちは今でも忘れられません。

開発初期の試作版で遊べるなんて、うらやましいです。

矢頭はい、これはスタッフとして参加したからこそできる特別な体験かも知れませんね(笑)

その『スプラトゥーン』の中では、地形はゲームのバランスに直結したすごく重要なポイントでした。そのぶん、何度も細かい部分のやり直しをすることは多かったです。でも、妥協せずクオリティにこだわって、そうした調整を繰り返し続けていったからこそ、多くの人に遊んでいただけたのだと思います。続編の『スプラトゥーン2』も引き続き京都スタジオに依頼いただき、再びバトルステージを担当できたことは非常に嬉しかったです。

自分が成長する喜びと、スタッフの成長を見守る喜び

お仕事の中で、どんな時にやりがいを感じますか?

矢頭自分が携わったタイトルが世界中で販売されて、いろんな人の思い出に残るというのは、やはり非常にやりがいがありますよね。とくに『あつまれ どうぶつの森』は、遊んでいるお客様の様子がSNSなどを通じてダイレクトに見られるので、すごく楽しいです。

あと、子どもと一緒に『あつまれ どうぶつの森』をプレイしているんですが、自分が制作に参加したゲームで子どもと遊べるというのは幸せです。

お仕事で大切にしていることは何ですか?

矢頭最近は監修の仕事がメインなので、スケジュール管理というか、担当セクションの仕事がどうしたらうまく回るのかを考えることが多いですね。スタッフのみんなに、何か自分一人では解決できなさそうな問題があったら抱え込まずに気軽に相談してもらい、どうしたら良くなるかを早い段階で話し合うように心がけています。

それは僕自身にも言えることで、困ったことがあったら早めに誰かに相談して、解決への道を探るようにしていますね。もちろん自分自身でも解決方法を考えるんですが、まだまだ僕も経験が足りない部分がありまして...。だからこそ、同僚や先輩に「今、こういう状況です」と伝えて、どうしていくべきかを一緒に考えてもらうようにしています。

京都スタジオで働くうえで、求められるスキルや人物像を教えてください。

矢頭3D制作のスキルについては、高いに越したことはないのですが、自分で描いたものを作ることもよくあるので、絵が描けるといいと思います。

地形モデラーとしては、やはり背景作成の経験があったり、興味があったりする方が望ましいです。ただ、『あつまれ どうぶつの森』もそうですが、プロジェクトによっては地形以外のオブジェクトを作ることもあるので、そのタイトルの「世界観を演出する全てのもの」に、興味を持って柔軟に取り組める方のほうがいいですね。

あとは、「デザイナーとしてのコミュニケーション力」。これは、単純に人と会話するというだけではないんです。求められるクオリティに表現が達していない時に、会話を通して頭の中の完成イメージを共有するなど、なるべく少ないやりとりでそういったことを実現できるのが「デザイナーとしてのコミュニケーション力」だと思っています。

ご自身は今後どんな存在になっていきたいと考えていますか?

矢頭班長としてマネジメントの部分をもっと強化していきたいですね。本当は、今でも隙あらばスケッチを描いたりするくらい手を動かすのは好きだし、もっと作業したい気持ちもあるんですよ。でも、班長としての経験を重ねていくうちに、まわりの人に作ってもらって良いものができていく喜びも、最近は感じるようになってきています。

『あつまれ どうぶつの森』でも、最初はすり合わせに時間がかかってしまうことが多かったスタッフが、作業を重ねていくうちにスムーズに進められるケースが増えていきました。そういう姿を間近で見ていると、すごく嬉しく感じます。

チームのスタッフにいい仕事をしてもらうためには、自分でものを作る時とは全然違うことを考えないといけないし、作業進捗も見る必要があります。うまく教えることだけに時間を割くわけにもいかないので、効率良く進めながら教える難しさを常々感じていますね。それでもスタッフのクオリティを底上げしたり、いい影響を与えたりするために、みんなが気持ち良く働ける現場環境を作るのが今の目標です。

最後に、入社を検討されている方へ向けてメッセージをお願いします。

矢頭最新のゲーム開発の技術に触れながら3D制作を進める中で、スケッチを描いたり提案したりと、たくさんの経験を積むことができます。京都スタジオで、より自分を高めたいと思っている方のご応募をお待ちしています。

本日はどうもありがとうございました。

※感染症対策として
ビデオ会議形式にてインタビューを実施しました。